10/16.17.18の三日間、雲仙市瑞穂町伊福八幡宮で秋の新嘗、屯宮祭(とんぐうさい)が行われました。
旧暦月名で10月は神無月といいますが、八百万(やおよろず)の神様が島根にある縁結びの神様出雲大社に集結し、来る年のご縁について会議を行うため、全ての神様が出払うことから“神が居ない月”で“神無月”になったとか。
出雲大社のお祭りの1つとして10月に神在祭があるのは有名ですね。
瑞穂町の氏神・伊福八幡宮では、神様が留守の間、人間が神様に成り代わって地域をお守りしようと始まったのが屯宮祭の人間神様という習わしです。
全国どこを探しても他に類を見ないこの制度。実は約400年以上続く歴史あるお祭りでもあります。
八幡宮の総本社である大分県宇佐八幡宮の御分霊をここへ勧請するときに、伊福代表6名で宇佐に赴いたことから神様の代役を努めるのは6人となり、あわせて六人衆と呼ばれています。
宮司による厳正な審議の結果選ばれた六人衆は8/29に行われる風除(かざよけ)祭で発表されます。
上横田・下横田、上大川・下大川、上田方・下田方の6つの集落から代表が一人ずつ選任されます。
六人衆に選ばれる基準はというと、戸主であること以外特にありません。健在であれば誰でも可能性はあるということです。ただ、一度務めると20年は選ばれないので、次に順番が回って来た時にはちょうど息子世代に交代しているというシステムです。
2016年 神様に選ばれた方々の紹介
上大川 寺田高徳さん
下大川 宮野明義さん
上横田 久保田利之さん
下横田 松尾博生さん
上田方 大場賢一さん
下田方 長田正彦さん
このお祭りの見所は、なんと言っても神様達の飲みっぷりと予想外なリクエスト!!
六人衆は白装束に身を包んでから三日三晩神社で過ごしますが、その間はほとんど飲みっ放し。
反対に神様から「飲め」とつがれた酒は必ず飲まなければなりませんし、神様からわがままを言われたりイタズラをされても怒ってはいけません。
なぜならば神様だからです。
この3日間の全てのルールは神様の元にあります。
ベロベロになった神様は、お付きの氏子たちに「あれが欲しいこれが欲しい」とおっしゃいますが、“神様の言うことは絶対”ですので、頼まれたら何が何でも叶えなければなりません。
過去に岩ガキをご所望の神様がいました。時期的に入手困難だったので、どうすることもできずに、岩に柿を乗せて神様にお出ししたという逸話があります。
この日は代表を呼んでの中日大祭。
飲むことが神様の勤めの様なこのお祭りではありますが、飲んで騒ぐ以外にも大切な役目があります。
早朝5:30前に氏子に起こされ、川で普禊払いをします。
その後小学校中学校の朝の出迎えをし、朝食とったあとは、五穀豊穣や企業の繁栄を願って農協や銀行、総合支所をご巡幸されます。
神様にインタビュー
寺田高徳(てらだたかのり)さん
「選ばれた時の心境は複雑でした。
光栄大役である任務なので努められるかどうか心配しました。
しかし、選ばれたならば男である以上やろう!と決心しました。
せっかく選ばれたのならば、この三日間は食べ物は何でもお願いできるので、今日の夜10:00すぎに用意していなさそうな物を頼む予定です。」
楽しくお酒を召し上がる六人衆の様子
重要ポスト!
女性がいなくてはこのお祭りは成り立ちません。
神様からどんな料理を注文されるのかヒヤヒヤしていると話しました。
最終日のメインはこども会の相撲大会と餅まきです。
ご近所のみなさんは前日の夜、家で餅をつき重箱一箱分を持参します。
それを六人衆に奉納し、相撲の後に全部の餅を櫓のうえから撒くのが習わしです。
2015年に取材を受けて放送されたテレビ番組が、“第十回 日本放送文化大賞”で準グランプリをとった時のトロフィー
島原半島の地元民でもなかなか知らないこのお祭りは、奇祭とよばれるほど全国でも珍しいお祭りです。これから先の未来も、400年の伝統を守りながら絶やすことなく受け継がれていることを願います。
初日のお宮入り前は、関係者でなくてもお祭りを楽しむことができるので、興味を持ったから方は2017年の人間神様の様子を是非見に行ってみて下さい。