神輿の道案内人「はなだご」さんが黒いヘグロを塗って回る
立春から数えて二百十日目を中心とするこの時期、有明町大三東にある温泉神社では、五穀豊穣や豊漁を祈願する風除祭(かぜよけさい)が行われます。


今年も晴天に恵まれた8月24日、風除祭が始まりました。



午前8時、有明町大三東小学校近くの温泉神社で、9代目宮司・青木日向さんによる祝詞奏上から祭りが始まります。

神輿は氏子の担ぎ手たちにより、温泉神社から御旅所である江崎神社(大三東駅近く)まで渡御されます。


この祭りの大きな見どころは、天狗の面をかぶった「はなだご」さんの登場です。今年の「はなだご」さんは、この大役に初めて挑戦する若者。緊張した面持ちで真っ赤な天狗の面をかぶります。
大三東の東空閑地区と三之沢地区では、御神輿の案内役である「はなだご」が人々を追いかけます。こちらは温泉神社のある東空閑地区。
※八幡神社のある三之沢地区では毎年8月27日にお下りが行われています。

今年の「お下り」は、堺ノ松地区と一本松地区が担当。例年は1地区ごとの持ち回りですが、年々人手が少なくなっている現状を受けて、今回は2地区が力を合わせて神輿渡御行列を担いました。

「お下り」行列が町を練り歩く

神輿渡御行列がやってくることを告げる太鼓の合図。「ドーンドーン」と太鼓の音が町中に響きます。

「はなだご」とは、神輿渡御行列の道案内役を務める神様の使いで、榊を持ち、真っ赤な天狗の面をつけています。住民たちを見つけると、顔や体に「ヘグロ」と呼ばれる黒い炭の粉を塗って回るのがこの地域の特徴。

これは邪気払いの意味があり、塗られると縁起が良いとされ、子どもたちもはなだごさんを追いかけてはしゃいでいました。

たくさんの人たちが待つ大三東小学校に近づいてきた!

渡御行列は毎年、大三東小学校の大クスの木陰の下でひと休みし、水分補給。

へグロを塗られたくないと、逃げるこどもたち!

赤い天狗の面をかぶった「はなだごさん」が目に入ると、小さな子どもたちの表情が一変。

恐怖でその場から動けず、顔をくしゃくしゃにして泣き叫ぶ子の姿も。

「いやだー」「ごめんなさーい」と、なぜか謝る子も多い、、。

炭の粉「ヘグロ」を塗られそうになると、あちらこちらで悲鳴と笑い声が交錯し、祭りらしい賑わいに包まれます。

大人たちにとって「はなだご」は、幼い頃に自分たちも同じように追いかけられ泣いた思い出がよみがえる、懐かしくてありがたい存在。この日は、東京から「はなだご」さんに会いに帰郷した女性の姿も。かつてお母さんに抱っこされて泣きながら逃げていたであろう幼い頃と同じように、今はそのお母さんと並んで、笑顔で行列を見守っていました。

祭りの日、青々と広がる水田を背景に神輿渡御の行列が進んでいきます。

汗だくになりながらも、みんなが力を合わせて進む姿が印象的。

今年も無事に祭りを開催できたことに、宮司の青木さんは「地域の皆さんの協力に本当に感謝しています」と話します。

神輿の渡御では、道中いくつかの休憩場所が設けられており、その一角には小さな賽銭箱も置かれていました。通りがかりの人たちが足を止め、手を合わせて静かにお参りする姿も見られました。
今年も立派にへグロを塗られた皆さん ♪







「また今年も来てくれたねぇ」「これがないと夏が終わらん」と、笑顔で見守る姿に、世代を超えて受け継がれてきた祭りの温かさがにじみます。
【温泉神社(大三東)】
〒859-1414
島原市有明町大三東丁531
TEL 0957-68-0151

