雲仙市瑞穂町秋の風物詩「屯宮祭」が2019年10月16日から18日の3日間開催されました。
10月の神無月には日本中の神様が出雲に集まるとされています。氏神様が不在となるその間、瑞穂町伊福地区にある伊福八幡神社では神役人“かんえだち”(六人衆)が氏神様の代役を努め、生き神様として3日間を過ごします。
神役人(六人衆)=人間神様は、8月29日に行われる風除祭の時に選ばれます。その選び方は、祝詞を挙げる宮司の持つ金ぺいに神役人候補の名が記された紙縒が自然とくっついてくるそうです。
ちなみに、この年の神役人は20年経過しなければ次の候補になれません。
六人衆は伊福地区にある6地区の中から一人ずつ選ばれます。今年の六人衆の一人である上田さん。お上りに先立ち初日の朝からは人間神様の自宅でお祝いの会が開かれ、近所の人、親類知人など集まります。人間神様は白装束に身を包み、「神様!神様!」ともてなされます。屯宮祭の3日間は飲んで食べてを繰り返し、神様の要望に周りの人たちは応えていかなければなりません。近所の女性たちも食事や飲み物のお世話で大忙し。
上田さんは、23年前も人間神様になった経験者。「2回目となると落ち着いて取り組める」と笑顔で語ります。現在57歳の上田さんは「3回目もあるぞ〜!」と駆けつけた人たちから声をかけられていました。
上田家の座敷に飾られていた23年前の写真と玄関に書かれていた神様からのメッセージ。
23年前は小さかった娘さんたちも今年はお手伝いに走り回ってくれていました。
「お父さん頑張って!」と嬉しい応援!
人間神様は地面に足をつけることができません。周りの人におぶってもらい移動します。
黄金色に実った稲穂の田圃道を、綺麗に飾られた花車に乗り人間神様は神社へと向かいます。
化粧をしたり仮装をした付き添いの人を連れて、道で出会う人たちに御神酒を振舞います。
別の人間神様に出会った!
互いに御神酒を酌み交わす付き添いの人たち。
瑞宝太皷を引き連れた一行も。賑やかな太鼓や笛の音が瑞穂の町に響き渡ります。
六人衆それぞれの自宅を互いに訪れ、行列は進みます。仮装や花車の飾りなど、それぞれの特徴が楽しめますね。ちなみに、花車の飾りも人間神様たちの要望に応えて手作りされるそうです。
同じ地区に住んでいても、なかなか会う機会も少なくなったこの頃。伊福地区の人たちが顔を合わせ言葉を交わし親睦を深め合えるのもこの祭りの醍醐味。ほとんどの人が元神様!
一行が向かう先は400年以上前に建造された伊福八幡神社。
六人衆が皆集まると一気に華やかに賑わいをみせます。
飲んで飲んで歩き回るので、到着する頃には人間神様たちも付き添いの人たちも酔いが回ってきています。
神社にのぼる急な坂道をダッシュ!花車を押し上げ駆け上がります。
もちろん酔っているのでこける人も…。
その後、神事が行われ人間神様としてお努めが始まります。
六人衆は2日目と3日目の早朝には近くの川で『みそぎ』で身を清め各地区を回り、3日間神社で寝泊まりをします。
10月18日の最終日には小・中学生の相撲大会や餅まきなども行われ役目を果たした六人衆は自宅へと戻っていくのです。
たくさん飲んで笑って、五穀豊穣を願う屯宮祭。
島原半島の地元民でもなかなか知らないこのお祭りは、奇祭とよばれるほど全国でも珍しい祭りです。住民皆が協力し盛り上げ、これからも400年の伝統が引き継がれていきます。