古くから港として、また船員が多い町として栄えてきた南島原市口之津町にある船の学校「国立口之津海上技術学校」のご紹介です。
国道251号線にある口之津大屋郵便局前の信号を海側に曲がると「国立口之津海上技術学校」はあります。1954年に開校した口之津海員学校が前身で、2001年には全国8校の海員学校が統合され、独立行政法人海員学校とし発足。2001年、国立口之津海上技術学校に改名されました。
中学校における教育の基礎の上に、船員となるに必要な高等普通教育及び海技士免許取得等を図るための専門教育を行い、優秀な海上技術者を養成することを目的として設置されたこの学校では、長崎県内を中心に熊本県や鹿児島県など九州全域から大阪など関西から生徒たちが集まります。
2023年度は全校生徒73名。
口之津港の海の景色が間近に見える教室。
授業内容は、国語・社会・数学・理科・英語など、一般高校と同様の普通科目のほか、船長や機関長などの船舶職員になる為に必要となる、四級海技士(航海及び機関)水準の専門科目(航海・運用・海洋気象・船用機関・電気電子工学・情報技術など)の授業があります。数学など、リモートによる授業も行われています。
〈航海士〉
目的港まで安全かつ効率的な航海を行い、積荷を守り、旅客の命を預かる技術者です。船舶の操船技術のほか、航法計算、航海計器類の取り扱い、海上法規などを熟知し、また荷役や貨物の管理も担当します。甲板全体の統括などを担います。
〈機関士〉
船を航走させるための動力である巨大な主機関の運転はもちろん、船内電源を供給する発電設備、給水設備、また船内生活を快適にする空調機など、船内のあらゆる機器類の取り扱いやメンテナンスを行う総合エンジニアです。
全寮制ではありませんが、今年度の生徒は全員、敷地内にある寮で生活をしています。管理栄養士の作る食事で栄養面はバッチリ!寮生活をする事で、自然と協調性や社会性が備わっていくようです。
※GWや長期休暇中は寮を閉鎖するので、生徒は全員帰省。
実習棟には、航海実技と機関実技のための設備が整っています。エンジンを組み立てたり、文鎮を自分で削り作り上げるなどの海の上でも対応できるよう、モノづくりの基本となる知識を身につけていきます。
船員として欠かせないロープワークも、さまざまな用途に対応できるように学んでいきます。
レーダー・自動衝突予防援助装置(ARPA)シミュレータ講習。海図の見方をしっかり学んだり、シミュレーションを何度も行うことで、実習船での事故を防ぐことができるそうです。
学校の艇庫。
人数確認や帽子・靴紐など安全点検をしっかり行い練習船での実践授業。伝馬船から、ブイ係留の練習船に渡ります。
まずは機関班のメンバーが乗船。船内の電源がない状態から機器を立ち上げる手順や入港後の機関終了の手順を先生と一緒にしっかり点検を行います。エンジンの音が響き渡るエンジンルームから機関制御室に入るとやっと一息つくことができます。機関制御室と操舵室は直で話ができるように繋がっています。
発電機が回りエンジンが始動すると、機関制御室から「甲板機器使用可能です」とアナウンスが出されます。
甲板全体の作業も着々と進行。
操舵室では国旗・校旗をマストに掲げ、舵が上手く切り替わるかなど点検項目のチェック。時間をかけて確認作業を行います。
発航前点検結果良好の確認が取れたら、学校に(衛星)電話で「運航開始」の連絡をして出航!
標識を確認したり、近くの船をレーダーでチェック。
航海中は機関班のメンバーも海図を見て、距離や時間、速度などを計算していきます。
「ガット船だ!」海の上を行き来しているたくさんの船を間近に見ることができる!
海の風は気持ちいいー!
海から眺める島原半島。なかなか見ることができない光景も生徒たちにとっては見慣れた景色。イルカを見れることもよくあるそうです!
目標の熊本県天草市の湯島を発見!双眼鏡で距離を把握し、舵をきっていきます。
学校の近くまで戻ってくると、口之津歴史民俗資料と赤いなんばん大橋が見えてきました。
キラキラと水面が光る午後。甲板でも上陸準備を進めていきます。
口之津海上技術学校では、万一船が遭難したときを想定して、練習船の上から飛び込む「船外脱出訓練」と救命いかだによる訓練も行なっているそうです!
※Youtubeでも見ることができます♪
船を降りるまで確認作業は続きます。
使用したロープなどは水で流して綺麗に後片付け。甲板上の作業員は必ず、救命胴衣又は作業用救命胴衣と安全靴を着用していますが、頑丈な安全靴は重くて暑い!何度も練習船に乗船することで重さにも慣れてきたそうです。
撮影の協力をしてくれた2年生の皆さん!
先生から「元気がいいクラス」と言われるように、笑顔がたくさん見られる仲のいい学年です。
チームワークに欠かせない実習でもあるカッター訓練。カッター部は現在21名の部員が活動しています。7月21日から23日まで福岡県立水産高等学校に第25回全国水産・海洋高等学校カッターレース大会に出場!1,000mのタイムを競う熱きカッター競技が行われます。
コンパスマークの校章。冬服のボタンもコンバスマークが使用されているそうです。
3年生は1月から3月までの約3ヶ月、さらに卒業後は、日本丸や海王丸といった大型練習船での航海訓練(6ヶ月)を修了し、口述試験に合格すれば「四級海技士(航海)」と「内燃機関四級海技士(機関)」の資格を取得していきます。
資格取得後には内航貨物船やフェリーなどの船員となり、日本の物流を支えるとても重要な仕事を担い活躍していく生徒たち。そんな船員たちを育てる国立口之津海上技術学校です。
\\ interview //
入学したきっかけ、将来の目標、学校生活、中学生へのメッセージを尋ねてみました。
3年 田中友規さん(南島原市出身)
もともと車やバイクのエンジンが好きで祖父がこの学校出身だったこともあり決めた。将来は石灰石船のような船の機関士になることが目標。入学当初は寮生活や覚えることの多さに不安になることもあったが、すぐに慣れることができたし、カッター部のキャプテンとしても頑張ることができた。
「柔軟性のある考え方で、なんでも諦めないでチャレンジしてほしい」
3年 三谷大和さん(島原市出身)
海が好きで調べている時にこの学校のことを知り中学2年生の時に決めた。エンジンを組み立てる実習が好き。カッター部でも試合に向けて励んでいる。将来はタンカーに乗る機関士になることが目標。
「海の上で仕事ができたり、自分の知らない事を知ることができます!」
3年 城川人夢さん(南島原市出身)
両親に進められて決めて進学したが思った以上に楽しい学校生活。1学期ごとに寮の部屋も変わるのでいろいろな人と仲良くなった。モノづくりの実習が得意だったのもあって、将来はタンカーの機関士になりたい。
「船での生活は人との付き合い方が大事なので、寮生活とかでたくさん学んでほしい」
3年 植木彩翔さん(南島原市出身)
海が好きだったこともあり、人の役に立つような仕事に就きたいと思いこの学校に決めた。サッカー部で高総体にも出場。実習で船に乗るようになって機関士から航海士に目標が変わった。将来はRORO船に乗って、3級海技士を取得することが目標。
「実際に船に乗って海の景色を見てほしい。」
2年 米﨑美乃莉さん(熊本県玉名市出身)
この学校卒業の人に話を聞いて決めました。寮生活も先輩が優しいので楽しい。カレーライスが美味しい!文鎮づくりの実習が印象的だった。カッター部では艇長を勤めている。どのような船種の内航船にするかは決めてないが、エンジンや整備に憧れがあるので機関士になりたい。
「この学校で、船員の道をしっかり進んでいくことができます。普通の学校で体験できないことに出会えます」
オープンスクールも開催中
・校内見学
・体験授業(ロープワーク、機関授業)
・体験航海(校内練習船口洋丸に乗船し、クルージング)
詳しくはHPをチェック!
\就職率は100%/
新しい自分を見つけることができそうな学校を見にいって見ませんか。
独立行政法人海技教育機構
国立口之津海上技術学校
〒859-2503
南島原市口之津町丁5782
TEL 0957-86-2152
web https://www.jmets.ac.jp/kuchinotsu
facebook @国立口之津海上技術学校
twitter @kuchinotsukaijo