ドン、という一打が空気を震わせ、観客の視線を一瞬で引きつけます。イベントで力強い太鼓の音を響かせている「島原農業高校 島農和太鼓部」の紹介です。

武道場で日々練習を重ねている島農和太鼓部は、今年、3年生1人、2年生5人、1年生1人の計7人で活動しています。

人数だけを見れば小さな部ですが、ひとたび演奏が始まると一気に存在感を放ちます。大きな太鼓の音は武道場の外にまで響き渡り、迫力と力強さを感じさせるものです。少人数ならではの結束力を生かし、和太鼓の魅力を表現している部活です。

同好会として17年、部として6年目を迎える島農和太鼓部。部のコンセプトは「飛び出す絵本」です。「舞台の上で完結する演奏ではなく、音と動き、そして想いを、どれだけ観客のもとへ届けられるかを部員全員が常に意識しています」と話してくれるのは、同好会時代から和太鼓の指導を担っている顧問の小松先生。
基礎が支える迫力の音

基本的に毎日2時間ほど練習を行っています。走り込みから始まり、準備運動、掃除を経て、基礎打ちへと進みます。


バチの持ち方や音のそろえ方を徹底し、和太鼓に欠かせない足腰と体力を鍛えています。 和太鼓演奏は足腰が支えであるとして、基礎体力づくりにも重点を置いているそうです。



夏から11月にかけては、地元の祭りやグループホームの敬老会や神社の大祭などイベントが続くシーズンです。日本太鼓ジュニアコンクール県大会や長崎県高校総合文化祭などにも出演しています。


そうしたさまざまな舞台に臨む中で、小松先生は「賞を目指すこと以上に、お客さんに曲を届け、楽しさを伝えられる演奏を大切にしている」と日頃から部員全員に伝えています。


10月に開催された島原市大手門市の舞台でも、その思いを胸に、会場いっぱいに力強い音を響かせました。躍動感あふれる演奏に、手拍子や歓声が起こり、観客も一体となって楽しむステージとなりました。


部員は7人と少人数ですが、その分、一人ひとりの距離が近い部です。演奏の技術や表現について分からないことがあれば、誰か一人で抱え込むのではなく、自然とみんなで話し合いながら解決していきます。


意見を出し合い、支え合える環境があるからこそ、演奏にも一体感が生まれます。

普段から仲が良く、自然と笑いがうまれる雰囲気もこの部の魅力です。

毎年10月頃に舞岳山荘で行う合宿には卒業生も訪れ、現役部員たちとの交流の場となっています。卒業後も太鼓を続けているOBがいることもあり、こうした関わりが続くことも部の大きな財産だと小松先生は話してくれました。
イベント時には演奏だけではなく、準備や片付けから部員たちが率先して動くことで地域団体との関わりも深めています。こうした活動を通して、技術だけでなく責任感や協調性、社会への関心も育まれています。
\部長に聞いてみた/

部長・山城みきさん(3年)
高校入学後、先輩に誘われて和太鼓部に入部しました。最初は思うように音が出せず苦労しましたが、2年生の後半に部長に任命されたことが大きな転機となりました。
「後輩を引っ張る立場になり、自然とスイッチが入りました。拍手や『上手だったね』と言われる瞬間が一番うれしいです」と笑顔で話します。
3年間を振り返り、「和太鼓部に入って本当によかった。厳しさもありますが、先生が優しく、仲間と何でも話し合える部です」と感謝の気持ちを語ってくれました。


島農和太鼓部の演奏曲は9曲。そのうち「魂」「こだま」「いぶき」「双曲」の4曲は代々受け継がれてきたオリジナル曲です。普賢岳災害や島原の四季、喜怒哀楽をテーマに部員みんなで創りあげています。その年の部員構成に合わせてアレンジを加えることもあることも。

演奏中には、担ぎ太鼓や笛、チャッパの部員が舞台上を動き回る場面があり、視覚的な演出も魅力です。振り付けは代ごとに微調整しながら継承されています。
この日は3年生が参加する最後の舞台「島原市民音楽祭」を翌日に控え、本番をイメージした演奏を行いました。



練習の最後には、先生が考えたメロディーをもとに、みんなでアイデアを出し合いながら作ってきた未完成の曲を演奏。楽しそうな表情で音を重ねる姿が印象的でした。

翌日のイベントでの動きをみんなで確認し、本番に向けて気持ちを一つに!

本番では、これまでの練習の成果を発揮し、見事な演奏を披露できました♪
2月のチャリティコンサート

毎年2月には、島農和太鼓部が主催のチャリティコンサートを復興アリーナで開催。コンサートでは演奏だけでなく、東北、熊本、能登半島地震の現在の様子を部員がプレゼン。島農和太鼓部の音は、舞台で終わらず、観客へ、地域へ、そして震災の地へと「飛び出して」広がり続けています。
来年2月にも開催予定です。
ぜひ、島農和太鼓部の思いのこもった演奏を見にいってみませんか♪
【島農和太鼓/長崎県立島原農業高等学校】
〒855-0075
島原市下折橋町4520
TEL 0957-62-5125(代表)
web https://www2.news.ed.jp/section/shimabara-ah